アラサーリケジョの寄る辺

迷いながらもそれなりに人生を謳歌するアラサーリケジョの日常

【リピート後】「チェリまほ THE MOVIE」

上映延長の恩恵を受けて、8回目行きました笑

小さい箱ゆえの皆で観てる感があってよかったんですが、調子に乗って最前列にしたら思いっ切り見上げるアングルで不思議な感じの映像だったし、首痛くてしんどかった笑

男子高校生グループに、何目当て???ってなるなど(ドラマから?中の人推し??)

仕事終わりのレイトショー、多幸感にただただ感謝でした。

 

初見のふんわりした感想に加えて、トピックごとに気になったことなど。称賛、微批判色々。

 

※6/5:9回目行ったところでご挨拶、結婚式他細々と追記。(箱は大きくなかったけど席も音響もよい映画館でした^^)

 

・「俺はまだ、魔法使いだ」

「映画での出来事は絵本の中の出来事で現実ではないのでは……?」という解釈を見て導入注目してたけど、個人的には、魔法使い継続の流れの方が苦心を感じた。(それもドラマのエンドがすばらしかったからであり、本当にドラマヒット後に映画化が決まったんだなあと感慨深くなるのだけど)何とか解釈すると、仲直りしたクリスマスの夜は何もなく、長崎転勤のエピソードがあった後、エレベーターキス、なのかな。個人的には、イブに魔法使いを卒業した世界線はエレベーターキスへ、あの夜うまくいかなかった世界線では長崎で魔法使いを卒業する、っていうパラレルワールド解釈もありなのではないかと。どの世界線でも末永く手を取り合って生きていくと思いますし。

 

・転勤と遠距離と仕事と

期限付きの転勤で深刻になりすぎでは……?と思うけど(お互い気持ちが離れそうなタイプでもないし)、付き合ってすぐかあ、と思うと(ですよね?)腑に落ちたところもあったので、そういうフォローがあってもよかったかもしれない。スタイリングもセットもこだわり抜かれた作品なのに、時間軸の扱いが雑に感じられるのはちょっと気になる。

加えて、ドラマ11話の地獄は二人のトラウマで、特に安達くんにとって「黒沢にあんな顔させたくない」は切実だったんだろうとは思う。

しかし、「俺が重荷になってるのかもしれない」と悩む黒沢くんに対して、初彼の笑顔のためならやりたい仕事も蹴れる安達くんも相当に重くて最高です。

あと、黒沢くんと和解するまでは仕方ないとしても、原作のようにお仕事頑張ってる描写はもうちょっとあってもよかったかも(社会人故の欲張り)

和解してからのきらきら遠距離恋愛(ですよねきっと)をドラマのトーンで観たかった。仕事から疲れて帰ってきたら恋人から労いのメッセージが届いてるって最高なはずだし、例えば通話しながらお互いご飯食べるとか絶対よいもん~~

 

・ベストシーン

すべてが名シーンといっても過言ではないと思いますが、やっぱりシーンとしての完成度は長崎の夜かなあと思います。二人で撮った最後のシーンのようなので、まさに集大成なんだと思っています。

 

・キスのこと

「がっつりキスが見たかったのに!」っていう願望はいいんですけど、配慮・大人の事情というのは違うのかな~と思っています。配慮ではないというのは、監督も公言されたようですし。(例えば、群像劇やオムニバスでヘテロのラブシーンでは直接的な表現がされているのに、同性カップルではない、ということであれば意図的かなと思いますが)大人の事情なら、そもそもこの作品のオファーを受けなかったのでは……と思います。ハグは多いくらいな気もするし、ラブシーンも濃厚だと思うので。

こだわりのない私は初見時「ドラマではしなかったけど、映画はがっつりするんや~~」ってなったし、布教した友人も「え、キスしてたよな?」って言ってたので、『キス』への期待値で感じ方は違いそうだなって思ってます。

どちらかというと、例えば長崎の朝、ベッドの中で額に軽くキスするとか、そういうスキンシップの方がしそうだな~と思うし、見たかったかもしれません。

フィクションとしてどうなの、とは思いますが、二人の大切な瞬間は他人には見せない、というこだわりのようにも感じられてそれはそれで素敵だな~とも思います。

あと、黒沢くんが安達くんとのキスを誰にも見せたくない、という解釈ができてしまう組み合わせでもあるので……(朝チュンも、肌合わせた後なら、黒沢くんがそのまま安達くんを寝かすはずないもんな~綺麗にして服着せて寝かせてあげるだろうな~~と思うなど)

6/5追記:「配慮ではない」というのも違ったかなと。映像の藤崎さんのキャラクター造詣を鑑みるに、『同性愛』『腐女子』『Z世代』などラベリングしがちな色々なものに(おそらく当事者を傷付けないよう)配慮された作品だと思うので。「露骨なシーンはちょっとな」っていう安易な配慮ではないというだけで。

 

・同棲

初見は、「えっ、狭い方の家で同棲するの!?」って思ってしまった笑(黒沢くんが安達家に住みたいとか色々気持ちがあってとは分かりながら)

まあ、単身にしては意外と映像の安達家なら狭くなさそう(かつ黒沢家も原作ほど広くなさそう)なのでいうほど不自然でもないのかも(?)

でも、「ベッドは黒沢家の方が大きそうだったから、一緒に寝るなら持ってきた方が……」と思ったらベッドは黒沢家のになってて、ほんと細かいところまでフォローされた作品だなあと。

でもやっぱり会社に近い方がいいとは思う(社会人の譲れない現実路線)

 

・手をつなぐ

ドラマの時から、手をつなぐ瞬間、黒沢くんが手を回り込ませてつなぐんだな~と印象に残ってて。

いわゆる恋人つなぎじゃなくつなごうとするとああなるのかもしれないんですが、他の映像でのイメージが希薄なんですよね。恋愛ドラマでクローズアップされるのってやっぱりハグかキスだし、それだけチェリまほが手の描写にこだわってるからなんだろうなと思っていて。

映画のアウトドアデートまではそうなんだけど、ラストはどちらともなく、むしろ安達くんから絡めにいくようにも見えるの、黒沢くんがリードする関係からの変化を表しているようですごく好き。

 

・つげみな

「友達が言ってたけど」は嘘で、湊くん自身が自分のせいで柘植さんがスランプなのでは?って悩んでたんだろうな~と。(友達のことなんだけど……は大概本人のこと説。本当に友達から言われたならすみません)

四人のシーンはどこもいい、ってメイン二人が言ってたけど、同棲祝いに家飲みするシーンが何もないけどあったかくて大好き。

 

モンブランと安達くんの気付き

黒沢家への手土産にモンブランを挙げるの、黒沢くんを助けられた印象的な出来事/社長さんのゲン担ぎにあやかる意味があるのかな~と思う。こういうドラマとのささやかなリンクが随所にあるの好き。

あとここで、黒沢くんを見てて元気ないのに気付くの(逆に黒沢くんはそんな安達くんを見る余裕がない)、安達くんの成長であり、立場の逆転で印象的だな~と思う。

初詣のシーンもそうだけど、映画は安達くんが黒沢くんを見ていることが多くて、黒沢くんが安達くんを見ているばっかりだったドラマからの変化が感じられてよい。

 

・「一人で傷付こうとするなよ」

何だかんだこのシーンが一番好きかもしれません。

安達くんがかっこ良いのはもちろん、「一緒に幸せになるんだろ?」に続くように、安達くんが強く在れたのは、黒沢くんの挨拶があったからなんだろうなと思うので。黒沢家での安達くんのあいさつは各所で絶賛されてますが、安達家での黒沢くんの挨拶もすごくかっこ良かったですし、隣で聞いてた安達くんもぐっときてたのがいいなあと思うので。(原作のエッセンスを生かした良改編だと思ってます)

あとやっぱり、初めて心に触れられたあの公園なのがね~憎いよね~~

 

・ご挨拶

初見は正直「ここまでやるの?→さすがに優しい世界よ……」ってなりました。

リピート後の解釈としては、安達くんのご両親は、不器用だけど真面目で誠実な息子が「選ばれない」かもしれないことが心配だったのかもと。一方、黒沢くんのご両親は「何でも選べる」息子が選んだものが思ってもみないものだったから心配だったんだろうなと(本人も相手も傷付くかもしれないし)

双方、大切な息子だからこそ、認めてあげたい/認めるわけには、ってなるし、多分そんなに親の手も焼かせず育ったであろう二人のわがままだからこそ親も受け入れてくれたのかなあなどと。大事な息子が選んで連れてきたひとが悪いひとのはずがないのはよく分かってるだろうし。

もちろん、自分の子供だと話は違うだろうけど、お父さんは会社勤めなら多様性の研修とか受けてる世代だろうなーとは思う。

あと、挨拶に至る安達くんのこれからに向けての決意のシーンもよい。ドラマからmcdくんの眉の動きは印象的なんですが(狙ってるのか表情作るときのくせなのか)、aksくんは視線の動きがすごいなーと思ってて。考えながら話してるところで、瞳が自然に彷徨ってるのが印象的で。現実はそうかもしれないけど、演技でやるのは難しそうなので。

 

・結婚式

緊張すると真顔になる、という安達くんが一世一代の晴れの場で笑ってて(頑張ってる感はあるけど笑)、黒沢くんも自然に穏やかに微笑んでるの、本当に素敵だなあと思う。

あの時間軸が夢でも、いつかは必ずやると思うので、垣間見せてくれてありがとうの気持ち。

 

・ラスト

初見時は、「海のシーンでフェードアウトかな?→結婚した⁉→冒頭のシーンに戻る→あ、ここで終わるのか」って感じで二人の表情にさほど注目してなくて、不穏さもそこまで感じませんでした。回を重ねるごと、制作陣の談話も聞き、確かに、と思う一方で、安達くんの表情の方が先に緩んで手を振り始めて、黒沢くんの表情の方がずっと堅いのが、細部の解釈と演出最高……ってなります。真剣なことをいうと、あのラストをしんどく感じたなら、世の中を変えていこうよということなんだろうと思っています。

あと、魔法がなくなるのもあり、ラストに向かうほど、ただの男二人の物語感が強くなる気がするんですけど、魔法使いが王子様の呪いを解いて、まさに二人ともただの三十歳の男になれたんだな~と思う。

映画は期待違いだったって意見があるのは、ドラマのおとぎ話のときめき感が魅力的だったからなんだろうなと。でも、その先を描きたいと作り手が思っての映画で、私はその変化も含めていいな~と思っています。

6/5追記:キスなどの二人にとって大切な瞬間は見せない、ラストシーンを現実っぽくしたのは、くろあだはドラマの中のものじゃなくて、私たちも観客ではなくて、同じ世界線を生きてる、と思わせる粋な演出でもあるのかな~と思ったり。

あと、ドラマ・映画前半の印象的なシーンは夜の場面が多いのに対して、後半のご挨拶・プロポーズ・結婚式・ラストシーンと昼の場面が続くの、それぞれ内面の問題と向き合った先で、一緒に陽の下を歩いていきたい/いくためにソーシャルな問題に立ち向かっていくという象徴なのかなと思ったり。

 

・エンドロール

エンドロールでぐっとくる人間なんですが、黒沢くんをイメージした心音の二番にさしかかる瞬間にmcdくんの名前が流れるの本当にすごい演出。もっとポップな感じとか、オフショ流しながらでもいける映画でありながら、黒バックで白字が流れるシンプルなエンドロールがとても素敵でした。

 

 

いい意味でなーんでこんなにハマっちゃったんだか、考えながら円盤を待ちたいと思います。
公開館が限られているとはいえ、まだ平日でもコンスタントに入ってて……本当に恐ろしい作品ですよ。